2002年6月 EJインタビュー その3

出典:  ej-l Mailing List dd 20/07/2002
copyright: ericjohnson.com, 2002
Interviewed and original text transcribed by: Paula Beard, ericjohnson.com
「日本語文責: 山巻 由美子」

このinterviewは、EJ-Lで不定期に行なわれるものです。ej-jpがPark Streetの許可を得て翻訳/配信します。従って配信/引用等は、固くお断り致します。なお、日本語文責は、山巻 由美子が負っています。

PB: Paula Beard(インタビュア)
   PBの文中の質問者名は、それぞれ文頭の()内に示します。
EJ: Eric Johnson(回答者)



PB:(Haruko)
Dann Huffをどう思いますか?
[居合わせた人間の誰一人、Dann Huffを知らず]

EJ:
(((((笑))))) その人は知らないけど、Dan Blocker*は注目に値するよ!
聞いてよ、地図が燃え上がって、連中がその燃える地図をくぐって出てくるんだ..... ホントすごいよ!!
��*訳注:俳優。1959-72。米国の懐かしのTVドラマBonanzaで、Eric 'Hoss' Cartwright役を演じたことで有名。迫力あるつぶれ顔をしている)

PB:(Shiozawa)
ソロの時、FuzzFaceとTubeDriverはどちらをよく使いますか?

EJ:
ほぼ半々だね。

PB:(Shiozawa)
「Manhatten」の最初のギターソロで使っているのはFuzzFaceで、2番目の方は TubeDriverですか?

EJ:
��番目はそう。最初の方は確かTube Screamerだったと思うけど、思い出せないや。

PB:(Shiozawa)
FuzzFaceはoldではなく新品で、トランジスタをシリコンからゲルマニウムに変えたものだ聞きましたが、事実ですか?

EJ:
いや、オールドのやつだよ。

PB:(Shiozawa)
Old Stratocasterの1弦のブリッジをいつも、最近の仕様のものに交換されていますが、これの目的を教えてください。

EJ:
近年の仕様だと、ブリッジ内に小さなプラスティックピースが埋め込まれていて、 E(1弦)の音が細くなったりビリついたりしないようになってるんだ。B(2弦)との釣り合いが少し良くなるよ。

PB:(Shiozawa)
日本に持ってきたSGですが、インプットジャックを変えたのはあなたですか?

EJ:
いや、買った時はもうああなってたと思うよ。

PB:(Shiozawa)
日本のミュージシャンで知っている人はいますか?もし知っていたら、共演したい人は?

EJ:
誰も知らないな。でも五嶋みどりは好きだよ。素晴らしいヴァイオリニストだね。
あとYo-Yo Maと、この2人が最初に頭に浮かぶな。
��訳注:Yo-Yo Maはパリ生まれの中国系アメリカ人である。念のため)

PB:(Yumiko)
滞日中、ギグは別として、最も印象に残ったこと・面白かったことは何でしょう?
また、最悪だったのは?

EJ:
一番印象的だったのは、みんな素晴らしい人たちで、耳も肥えてるところ。
ちゃんとした演奏を出来る状態の時にプレイしたかったよ。最悪だったのは時差ボケ。
あまりひどかったから、ちゃんとしたショウが出来たとは思ってないんだ。また日本に行って、今度はほんとにいい仕事したい。

PB:(Jeannie)
Ericはクラシック音楽の訓練を受けてますが、クラシックのギタリストでは誰が好きですか? クラシックのCDを出す気はまだありますか?
「Song for Life」は傑作だと思うんです。あと、在ボストンのファンを忘れないで!

EJ:
Christopher Parkeningがとてもいいよ。彼と一緒に弾いてるDavid Brandonもよくて、2人で一緒に演ってるのなんか素晴らしい。
Segoviaは、ライブ観てるけど、ほんとに最高。Manuel Barruecoもいい演奏家だね。
フラメンコも好きだよ。フラメンコの演奏家で好きなのは、Sabicas。亡くなる前にライブ観たけど、彼はほんっとにすごい、すごい演奏家! 普通はこういう言い方はよくないけど。
誰かをつかまえて「世界一優れたギタリスト」呼ばわりするのは、ちょっとした家具屋に行って、ダイニングテーブルを見てて、テーブルの上だけ見て、「こんなすてきなテーブル初めて見た!」って言うようなもんだよ。
そりゃあ初めて見たのかも知れないけど、世の中には何千もの家具屋がある訳でしょ。そんな風に決めつけた言い方は出来ないよ。
でもね、Sabicasについては、もう彼は別格なんだよ! 彼は、ものすごく高い完全性のレベルに達した人のいい例だよ。Sabicasがレコード作るとしたら、スタジオにすたすた入っていって1~2回弾けば、それが決定版になっちゃうんだ! どれぐらいすごかったかわかるでしょ! 別に、他の才能ある人をないがしろにしてるんじゃないんだよ。誰でも尊いし、誰でも価値があるんだから。みんな素晴らしいんだ。素晴らしいプレイヤーは、そりゃ沢山いるんだよ。

PB:(某英国人より)
英国にはいつ来ますか?英国/欧州ツアーが新譜リリースの頻度と同じなのは偶然ですかね?

EJ:
欧州ツアーは、やりたいし、あとは物流の問題なんだろうと思うんだ。
欧州でレコードが売れて、ファン基地を築けばツアーに行けるから、そのために向こうでレコードが出せるように頑張ってるところ。
今現在のところでは、ファン基地はちょっとはあるだろうと思うけど、どうにかして欧州ツアーが実現出来るレベルにまで持っていく必要があるな。

PB:(Frank)
ソロ等のインプロビゼーションのためには、練習などどんなことをすればよいでしょうか?
発展途上だった頃は、どんな風にアプローチしましたか?

EJ:
メロディを創り出す練習と、自分の能力を最大限に引き伸ばして、そのメロディを出来る限り面白いものにするように、メロディを違うようにやってみたり、ひっくり返したり、ストリング・スキッピングをしてみたり、ゆっくり弾いて懐の深いプレイが出来るようにしたり、速く弾いてテクニックを磨いたり、色んな並べ替えをやってみるんだ。
僕はそうするようにしてるよ。

PB:(不明)
EricはAustin City LimitsでClint Blackと共演しましたね。
モダンカントリーをどう思いますか? 好きでしょうか?
Nashville(音楽産業の環境としての意味で、都市のことではなく)はどう思いますか?

EJ:
ブルーグラス好きだし、Alison Krauss好きだし、Nickel Creekはすごく好きだし。
どれもこれ以上ないってくらい大好き。みんな素晴らしいもん。

PB:
ほらそれに、マンドリンのChris Thile!

EJ:
ああ、そうだ! 何なの彼は、22歳くらいだって? すごいよね。Dolly Parton の新譜がとてもいいんだよ、Nickel Creekが参加してるんだけど。
彼女、本格ブルーグラスの曲唄ってるよ。

PB:(Brent)
カシオのシンセ・ギターの経歴を教えてくれますか? アルバムで使いました?
楽器にMIDIタイプのジャックじゃなく13ピンがついているのは何故なんでしょう?

EJ:
あれをMIDIコンバータに通す必要があったから。カシオはVenus Isleで何ヶ所か使ったよ。

PB:(Brent)
ライブではどうやってたんでしょうか?クリーン用の装備につなぎましたか、それとも直にシンセ・モジュール/キーボードに?

EJ:
いや、装備全体につないでた。

PB:(Brent)
以前エンドースしてたローランドのギターシンセと併用しましたか?

EJ:
してない。あれは別セットアップ。

PB:(不明)
ライブで「Cliffs」や「Desert Rose」などの曲を演るのは、ファンががっかりしないようにという義務感みたいなものがあるからでしょうか?
それとも今も自分が演りたいから演るのでしょうか?

EJ:
楽しく演る時もあるし、演らなきゃいけないから演る時もあるよ。
聴衆からインパクトを得たり、興味持ってもらったりしながらショウを構築していく訳だから、ショウの中でこの聴衆と上手くやっていくにはどうするか、を考えないとね。
今まで録音した内でも最高の、目くるめく出来の新曲をずらりと揃えて登場する場合じゃない限り、ある特定の代表的な曲に頼らなきゃならないんだヨ。

PB:(不明)
セットリストはどんな風にして作るんでしょう? セットリストをもっと面白いものにするために、古い曲を外したり、新しいカバー曲を入れたりするんですか?

EJ:
実のところ、セットリストはほとんどBill Maddoxが作るんだ。うん、古い曲の代表的なものと新しい曲を混ぜるようにしてるよ。

PB:(不明)
ColtraneやMiles Davisのようなラッパ系は聴きますか?
ColtraneやDavisの(他でもいいです)アルバムや曲やソロで、好きなものや、音楽的に影響を受けたものはありますか?

EJ:
「Naima」でしょ、「Central Park」でしょ、「Lush Life」はかっこよかったし、もちろん「Kind of Blue」は、誰もが認めるMilesの傑作だよね。
場の空気が、とても厚くてずっしりしててさ。彼としては一生懸命作ったレコードじゃなかったかも知れないけど、でもあの空気はすごいよ。

PB:(不明)
ギタリストに限らず、共演したい人などいますか?

EJ:
好きなプレイヤーだったら、ほとんど誰とでも楽しいだろうと思うけど、でも、すごく好きなプレイヤーについては、やってるそのままで十分好きなんで、一緒にやるからって、彼らのしてることに新たに何か寄与しようって意味じゃないよ。
一緒に楽しくやって、且つ貢献も出来るという場合もあるかも知れないけど。

なんか、政治家の答弁みたいだな。質問に全然答えてなくて。(微笑)ほんと答になってないや。

PB:(Jeff Shirkey)
EJは、ソロの時、4音、5音、6音を最高のタイミングで苦もなく混ぜたり代わる代わる使ったりしていますが、そういうタイミングやフレージングのセンスは、メトロノームを使わないとしたら、どうやって伸ばしていったんでしょうか?
自然に身につくものと考えてますか?

EJ:
いや、僕もメトロノーム使ってるよ。ここ数年は、以前にも増して使うようになったんだ。何しろ、僕は走りがちで、ビートに合わないことがよくあったから。
それでもいい場合もあるし、その方がよかったりすることもあるけど、でも全体的には、どんな音楽だろうと、ビートに乗せるのが大前提で、走っちゃうのはよくないんだ。だからその癖を矯正しようと思ってメトロノームを使い始めたんだよ。
メトロノームを使って練習するのは良いことだヨ。

PB:(Jeff Shirkey)
Ab、Eb、Bbといった風変わり(ギタリストにはそう思える)なキーを好んで使っているようですが、何故ですか?
こういったキーの方が響きがよいと感じているんでしょうか、その方が自分の音楽が面白くなり、特徴も出せると?

EJ:
どのキーもそれぞれに情感があると思うんだよね。GとEで弾いてたら、ギター演奏においてもうさんざん使い古された情感しかない訳。
だからそこでE#と来れば、ちょっと違う効果も出せるでしょ。

PB:
新製品のFulton-Webbアンプの開発に、どの様に関与したのか聞かせてくれます?

EJ:
DR-45というコンボ・アンプなんだ。Bill Webbと僕が共同でデザインしたんだよ。
基本的には彼のデザインで、細部を詰めたり、ちゃんとした音になるように矯正したりを一緒にやった。
新品なんて、Dumble使ってた頃以来で、ほんとにワクワクしてるんだ。もうギグでは使ってて、気に入ってる。とてもいいよ。
新製品でとてもいいなんて、80年代にDumble使ってた頃から久々だよ。あとね、45Wで、小さなコンボになってるから、持って歩けるところがいい。クールだよ。
もうひとつデザインしてるアンプがあるんだ。DR-45は基本的にはダーティリズム用のアンプで、特に、エフェクト・ペダル類をアンプの正面で操作するようになっているから、アンプの実際のトーンとエフェクト・ペダルの音をつかむることが出来るんだ。
音のいいアンプは沢山あるけど、エフェクトに優しいアンプはなかなかないよ。
エフェクトをアンプの正面に据えると、なんかクズみたいな音になったりしてさ。
DR-45は、「まんまでもいい音で、しかも正面に据えたエフェクトにも優しい」に特に重点を置いてデザインしてるんだ。
今作ってる第2弾は、もっとハイゲインの、ヴァイオリンみたいなタイプのアンプで、名前は「The Viola」になる予定。リードトーン用に、50Wのコンボ・アンプになるんだ。今後2ヶ月以内くらいに販売されるようになるんじゃないかな。

PB:(Val Serrie)
今現在はどんなギターを所有していますか?

EJ:
何百万本とはいかないけど、ちいさなコレクションはあるんだ。
基本的には、メイプルネックの50年代ストラト2本を使うのと、あと主に使うのはギブソン2本でしょ。ストラトは、'58年製と'57年製、それと、Bill Maddoxが譲ってくれた1987年製の青いストラト。非常に音のいいギターなんだ。
あとは'64年製のSGと、'64年製の335を使ってる。お気に入りの古いレス・ポールも1本あるな。こんなとこだね。

PB:
例の「カントリーの曲」にはもう名前つけましたか?

EJ:
ううん、まだ。

PB:
毎日弾いていますか?それとも弾かない日もある?

EJ:
毎日弾くようにしてるよ。ピアノかギターを。

PB:
ではツアー前、毎日リハーサルしますか?バスの中とかでも?

EJ:
うん、する。あと、ホテルの部屋でもちょっと。

Robert Beard:
オースティンでは、他のコンサート等をよく観に出かけますか?観たいものは?

EJ:
そうね、まだ観たことなくて観に行きたいのは、Redd Volkaert*。  (*訳注:カントリーのギタリスト。The Strangersで活躍。テレキャスター弾きの巨漢)

=====おしまい=====