2002年6月 EJインタビュー その2

出典:  ej-l Mailing List dd 20/07/2002
copyright: ericjohnson.com, 2002
Interviewed and original text transcribed by: Paula Beard, ericjohnson.com
「日本語文責: 山巻 由美子」

このinterviewは、EJ-Lで不定期に行なわれるものです。ej-jpがPark Streetの許可を得て翻訳/配信します。従って配信/引用等は、固くお断り致します。なお、日本語文責は、山巻 由美子が負っています。

PB: Paula Beard(インタビュア)
   PBの文中の質問者名は、それぞれ文頭の()内に示します。
EJ: Eric Johnson(回答者)




PB: (TJM007)
アルバム制作の時間を短縮するアプローチはとっていますか?
聴衆の反応が新譜録音に対するEricのアプローチに影響しましたか?
レコーディングに対する考え方は、以前とは違っていますか?

EJ:
うん、そりゃもう、すごくね。ていうか、ホント正直な話、今作ってる新譜は、もう何年も取り掛かっていることになるけど、でも今回採っている方法は、2~3日やっては1週間放っとく、ていうやり方なんだ。
Alienその他でツアーしてたりもするから、散発的にやってる訳で、そうすると実際に録音に費やした時間は、前の2作と比べて格段に短くなっているんだよ。アルバムにもはっきり出ると思うな。
基本的に、作業の時は、やることを順番にやっていくのじゃなく、部分で区切ってやるようにしてるんだ。

PB: (Hyre)
初めてEddie Van Halenのプレイを聴いた時(70年代後半か、80年代前半くらい?)、どんな印象を持ちましたか?

EJ:
Van Halenを生で初めて観たのは、Sammy Hagar在籍時代のほんとに最後の頃だったから、オリジナルは観たことない訳なんだけど、レコードは聞いて、すごいな、素晴らしいなと思ったヨ。
体の方、どういう状態になってるかわからないけど、よくなるといいよね。彼はHendrixや Claptonみたいに、ギター史を書き換えた人だよ。
彼らに次いで、新たな方向性を打ち出したんだ。彼のことを知りもしない頃に会ったことがあるんだけど、ほんとにナイスガイだったよ。
彼がAustinで初めてのギグをしに来た時でね、市の公会堂で演ったんだけど、その晩シェラトン・クレスト(ホテル)にひょっこり現れてさ。多分シェラトン・クレストに泊まってたんだと思うけど。僕の方は、Geneva and the Gentlemen(訳注:バンド名かと思われる)と一緒に座ってたんだ。そしたら後で彼がやって来て、「僕ら今、市公会堂でプレイして来たんだ。バンド名はVan Halenて言うんだよ」って。70年代のことで、丁度彼らの最初のレコードが出たばかりだった。
だから「このヒト誰だろう?」と思った訳なんだけど、もちろん一年後には、すっかり有名になっちゃった。だから、ちょっとオカシイね。

PB:
もし気晴らしや楽しみに、一人でギターを弾くことがあったら、どんな曲を弾きます?

EJ:
今でも色々違ったのを弾くよ。最近、家では、アコースティックじゃなければ(年末にはまたアコースティックのツアーをやりたいから、準備しようと努めてるんだ。
だからゆっくりとアコ弾きの調子を取り戻すようにしてるところなの)、エレクトリックで最近だと、ジャズ・ギターの曲を勉強するようにしてる。

PB:
アコースティックのツアーはいいニュースだわ。私は、前回観ていないんです。

EJ:
そうなの。2~3年前にやったんだよ。ハッキリ言って、新譜を仕上げて最終形が上がってから(多分ここ2ヶ月の内に上がるヨ)リリースになるまで、実際には3ヶ月か4ヶ月くらい間が空くからさ、その間にアコースティックのツアーをしようと、思ってるんだ。

PB: (Knut-Erik Teigen)
ソロの時のアルペジオ奏法について、聞かせて下さい。彼のリードのスタイルの中でも重要な部分だと思うので、様々なコードその他において、どんなアルペジオを使っているのか説明して頂ければと。

EJ:
アルペジオは、単に、スケール中のあるコードなり音なりをシークエンスで弾く、というものだよ。例えば、もし長調でやるとしたら、1、3、5、1、3、5.....で、短調でやるんだったら、1、3マイナー、5.....とか、そういう感じ。
そうね、僕はアルペジオを多用しているかも。ピアニストとかヴァイオリニストの演奏をよく聴くから、多分そのせいだよ。

PB: (Ericjohnsonfan03)
# 次に挙げるギタリストと、アルバムを作ろうと考えたことがありますか?   David Gilmour  
#   John McLaughlin  
#   Al Di Meola  
#   Mike Stern  
#   John Petrucci  
#   Pat Metheny  
#   Steve Morse  
#   Allan Holdsworth  
#   Fareed Hague  
#   Charlie Christian  
#   Eric Gales

EJ:
Mike Sternとは、何か一緒にやろうと話したことあるし、Steve Morseとはやったことあるし、多分またやるだろうと思う。そんなもんかな。
Charlie Christian? そりゃちょっと難しいんじゃない? もういないもん。ん? 「考えたことがあるか」? そうか! じゃあ、うん、いいと思うよ。
Mike SternもPat MethenyもJohn McLaughlinも好きなんだ。
Mike SternとPat Methenyなんて、ほとんどお気に入りのプレイヤーだもん......お気に入りの現代プレイヤーね。

PB: (Ericjohnsonfan03)
自分の作品を、楽しみで聴くことはありますか?

EJ:
ないない、全然ない。自分のやってることの実態をチェックするために聴きはするけど。
えーと、そうだな、たまには例外もないことはないかも。
例のお蔵テープをまとめる時なんか、何年も聴いてなかったものを聴いた時は、確かにとても楽しかったよ。なんていうか、面白くてね。単に自分のだから個人的に楽しかったのか、実際モノがいいのか、現時点ではまだわからないけど、でも聴いて楽しかったのは確かだよ。
色々思い出が甦るし、何かのために特に意図して作ったテープじゃないから、ある種の即興性や無邪気さがあって、こう、「とにかくやっちゃえ」的な感じで、精神活動があんまり反映されてないんだよね。ぎっちぎちに築き上げる感じで作って、「よし、これはこのレコードに入れよう、あれに入れよう」とか色気出して、自分で自分の足引っ張っちゃったりすることもあるし、ただ自分に都合よく、気持ちよくポーンとやることもあるでしょ。

PB: (Ericjohnsonfan03)
自分の作品で好きなのはどの曲ですか?また、その理由は?

EJ:
「Yesterday」に「Paperback Writer」に「Purple Haze」。思うにこれが私の全盛期の作品ではないかと。なんちゃって(((((笑)))))
 うわ、どうだろうなあ、「Battle We Have Won」は好きだな。あの構成は素晴らしいと自負してるヨ。新譜の中にも2曲ほど、なかなかワクワクする曲があって、結構イケてると思うんだ。

PB:
私たちが聴いたことある曲?

EJ:
いや、ほとんどはみんな聴いたことないやつだよ。「Your Sweet Eyes」とか、新譜ではAdrian Leggと一緒にやってる「Tribute to Jerry Reed」なんかは別だけど。

PB:
あら、そういえばAdrian Leggはオースティンに来るわ。

EJ:
 来るの? やった!! ライブ観た事ある?

PB:
いえ。

EJ:
すごくいいよぉ、音楽がいいだけじゃなくさ....

PB:
面白い人でしょ。

EJ:
面白いんだよ! 彼がそこに座って、そうだな、10分ばかり喋るとするじゃない。
いつのまにか思っちゃうんだ、「演奏しなくていいから、このまま喋り続けてもらいたい」。
Tom Waitsもそうだよね。もーホント! Tom Waitsときたら.....喋りがすごく上手い人のことなんて言うんだろう? なにしろ面白いよ。

PB: (Ericjohnsonfan03)
自分のアルバムで好きなのはどれですか? また、その理由は?

EJ:
ホントわからないです。どのアルバムにも気に入っている部分と気に入らない部分があるし、自分じゃ判断しようがないもん。

PB:
選ぶのが難しい?

EJ:
そう。選ぶとすれば『Are You Experienced』だね。(にやにや笑い)

PB: (Ericjohnsonfan03)
全くのジャズやカントリーや、アコースティックのアルバムを作る気はありますか?

EJ:
あるよ。ジャズについては、まだ奏法を勉強中なんで、しばらく待たないといけないんだ。新譜にはジャズが1曲入ってるし、もっと多くのことを勉強し始めたから、将来、自分がジャズの語彙をちゃんと適切に使えると思った時点でアルバムを作りたい。
カントリーは、あるプロデューサと、レコード作ろうかって話したことがあるんだ。割と早い内にそれをやって、それからアコースティックのレコードを作ろうかな、と思って。
そう、作る必要があるんだよ。アコースティックのレコード作ってくれっていうリクエストが多いし、アルバム作れるだけの曲もあるしね。始めさえすれば出来るんだけど。
実のところ、今作ってる新譜が終わった後でやりたい事は、アコースティックのレコードとカントリーのレコードを作ることなんだ。

PB:
やること一杯ですね!

EJ:
そ、かなり多産でね。音楽が大量にあって、もしその半分を編集したとしても、残りはやっぱり大量なんだよ!ほんと、一杯あって.....ネタは大量にあるんだけど、着手するのが遅いんだよね、僕は。なんていうか、いやでさ。
だから、ぱっと来てムチ振るって「やれー」ってやってくれるようなプロデューサがいるといいと思うんだ。

PB:
締め切りを設けた方がいいのでは?

EJ:
うん、でも「暴力脱獄*」じゃないけど、まず自分の頭脳をちゃんとしとかないと(にやにや笑い)何から逃げようとしてるのか、ちゃんと把握しないとね。
��*訳注:原題Cool Hand Luke、1967年米。ポール・ニューマン扮する主人公ルークが、酔った勢いでパーキングメータを破壊、公共物破損の罪で刑務所行きとなるが、所内における看守達の理不尽さに屈しないので、囚人の間で人気者となる。ついには繰り返し脱獄を試み...という、オトコの硬派映画)

PB: (Ericjohnsonfan03)
またライブアルバムを作る気はありますか?

EJ:
ぜひとも。

PB: (Ericjohnsonfan03)
長年色々なミュージシャンと一緒にやってきた中で、相性のよさを特に感じたのは誰でしょうか?

EJ:
Malford(Milligan)が出てきて唄う時が好きだな。楽しいよ、彼はすごく良い!
情熱がものすごくて! 実際、彼と演ってると、歌に聴き惚れちゃって、自分のプレイの方はベストに持っていけてないと感じる時があるくらいなんだ。
ステージで、彼と共演するにふさわしい演奏になるようにちゃんと芯を捉えられればと思うよ。そうすればパーフェクトなんだ、彼の方は素晴らしいんだから! でも時々、我を忘れて聴き惚れちゃって、自分の方は同じように出来なかったりするんだよね。(微笑)

PB:
彼は皆を盛り上げますよね。そのままでも充分素晴らしい人たちを、もっと上に持っていくというか。

EJ:
そう、それが僕は大好きなんだ! どこでだったか憶えてないけど、あるギグをやった時、そりゃもうとんでもなかったんだヨ! 彼はステージに出ると、盛り上がりを要求するから、みんなギャーギャー叫んでさ。で、ギグの後、僕は彼を抱いて、ギグがどんなによかったか話すんだけど、その時言ってやったんだ、
「あのね、Malford、君は素晴らしい歌手だよ、でも君のおかげでみんな落ち込んでるよ。だって君、ステージで全然存在感ないじゃない! 突っ立ってるだけで、聴衆には背中向けて、エネルギーは低調だし。まるで眠ってるみたいだったよ!」。
ちょっとからかってみたんだ。(((((笑))))) 彼は聴衆の盛り上げ方を知っているし、それがとても重要だってこともよくわかってるんだ。それが僕にいくらかでもうつったらいいのになあ。

PB:
でも、そうしたらあなたじゃなくなりますよ。

EJ:
そうかな、出来ると思うけど。自分に構わないようにすればいいだけだよ。
自分を中心に据えないようにしないとね。それと、僕はペダルやら何やら、集中して操作しなきゃいけないものが多くて忙しいから、他のことも同じようにやるのが大変な時もあるな。
それでも、努力は必須だと思うんだ。だって、楽しい時を過ごすことは大切だし、ステージでは事実楽しく過ごしているんだけど、みんな僕が楽しんでるってことに気づかないみたいなんだ。
だからみんなに、僕が楽しんでいるんだってことを知ってもらわなきゃいけないから、それには時々顔を上げてにっこりするのが一番だろうと思うんだ。

PB: (Ericjohnsonfan03)
G3がテキサスに来て、SatchとVaiとPetrucciと一緒に演奏した時は、どんな気分でしたか?

EJ:
オースティンでやった時? とてもよかったよ! うん。音がものすごく大きかったんだ、ほんと「ものすごく」デカくて。
こっちもおっとりと弾いた訳じゃないんだけど、とにかくボリュームときたら.....
はあ! でも楽しい出演だったよ。とても楽しかったけど、でもモニター担当者には、「よし、僕はこれこれの3曲をやるから、君は何をしようと、ともかくステージの僕の側のモニターだけはオフにしておいて」って言っといたんだ。
彼はちゃんとオフにしてくれたけど、その代わり、ステージ上のみんなは、「誰がモニター止めたんだ?」って顔で、きょろきょろしてたよ。(((((笑)))))
それ以外はとてもよかった。楽しかったヨ。

PB: (Ericjohnsonfan03)
他の技巧的プレイヤーやプログレを聴いたり、アルバム持っていたりしますか?

EJ:
いや、正直言って、全然。その手の人たちは、僕の周囲を巡っていて、関わりがないっていう感じだね。学ぶべきことは多いと思うけど。
僕は、自分がステージで早弾きしすぎると思うんだ。ステージに上がって、がつがつとソロを弾いちゃってさ。レコードでは、そういうことをやり過ぎないように努めてる。
レコードではもうちょっと統合出来てるようにしたいんだ。それに、ライブショウでは、ソロを延々とやらないように色々と調整しても苦にならないと思うし。延々とやらなくても、同じようなものすごさは出せるし、ソロの回数は多くてもいいんだけど、一歩退いてほんのちょっと差し挟むようにすればいいと思うんだ。
ライヴではそう出来てないと思う。
尤も、聴いてないとか言いながら、本当の本音のところでは、実は人の曲聴くの好きなんだ。
作った人のを聴くのが好きでね。延々とやるソロについて言えば、趣味的に許せるのはかなり限られているんだけど、これは完全に個人的趣味の問題だよ。延々たるソロだと、例えばClaptonがCream時代にやってたのとかは、いいと思うんだ。僕にとっては、あれは、ロックが遂に、ParkerやColtraneがやるようなソロに限りなく近いというか、殆どそれに等しいソロに到達したというものなんだよ。
そりゃ「あれはジャズであっちはロックだ」という議論もあるだろうけど、でも感触という点では.....要は感触なんだよ。
Claptonのソロはそういう意味で境界線上にあって、だから僕の心を捕らえたし、興味をひいたんだ。これはホントに、単なる個人的趣味の話だよ。音楽についてコメントしてるんじゃなくて、僕が好きなもののことを言っているだけ。
詰まるところ、僕はライブではソロをやり過ぎないようにしたいんだ。過ぎたるは及ばざるが如しってこともあるからね。

自分のライブ・テープを聴くと、こりゃ永遠に続くんじゃないかって思うことがあるんだ。
もうちょっと控えてもいいか、控えた方がむしろ良くなるのにね。煎じ詰めれば、もっと音楽をしっかり作って、ちゃんと志向性を持ってやれば、その枠組みの中で、自分の楽器で、卓越したものになれるんだよ。
だから、今はそれをライブで、そうねスタジオでもそうだけど、特にライブで、どうすれば極端に走らずにやれるのか研究してるところ。でないと聴いてもらえなくなるよ。
聴衆の中にそういう人がいるのわかるもん。正直言うけど、ちゃんとわかるんだよ.....
みんなが眼を丸くして、ほんとに没頭してるところ。僕らがそういう状態を起こした訳で、それってホントにクールだよね。みんなが僕らにエネルギーをくれて、僕らもみんなに与えて。
とても素晴らしいことだよ。そういうものの一部になれて幸運だと感じるんだ。
でも、ちょっとばかり長くやり過ぎて、ギアチェンジしてあと5分どう続くのかわからないことに突入すると、みんなが引いちゃうのがわかるんだよ。聴衆のエネルギーの変化がわかるんだ。
つまり、もうみんな、行きたいところまで連れて行かれてて、みんなで「この山の頂上まで来るのに6時間もかかったんだから、ちょっと留まって、景色を見ようよ」と言っているその瞬間に、こっちは「よし、車に荷物積もう。移動するぞ」って言い出す、みたいな。そういう傾向とどうやって折り合いをつけるかが大切だと思うんだ。

PB:
集中力が続かないんですよ。

EJ:
Pat Metheny Groupは、世界一好きなバンドのひとつでね。聴きに行って、ああ、すごいな! と思う。
けど、彼らでさえ、あんなにすごいのにだよ、2時間半のショウをやる時は、僕の注意力持続時間が限られているにしても、それを差し引いてもやっぱり、長丁場を持ちこたえるのは大変なんだよ。
僕はただ、自分自身でも何とかしなきゃいけない問題について、ここで正直に言っている訳なんだけどね。聴きに行くのが僕が足元にも及ばないようなすごいミュージシャンでも、2時間半も聴いたら、ぐったりしちゃう。
まあ、僕が「よし、2時間半プレイしてやる!」なんて思うのは、ちょっと僭越なんだけどさ。ともかく、そういう傾向をうまく乗り越えられるようにならないとね。

-------その3に続く--------