copyright: ericjohnson.com, 2002
Interviewed and original text transcribed by: Paula Beard, ericjohnson.com
「日本語文責: 山巻 由美子」
このinterviewは、EJ-Lで不定期に行なわれるものです。ej-jpがPark Streetの許可を得て翻訳/配信します。従って配信/引用等は、固くお断り致します。なお、日本語文責は、山巻 由美子が負っています。
PB: Paula Beard(インタビュア)
PBの文中の質問者名は、それぞれ文頭の()内に示します。
EJ: Eric Johnson(回答者)
PB: (Val Serrie)
Ericは、あれほどの高度なレベルを実現するために、生活を犠牲にしたと感じているでしょうか?
そうした選択に満足しているでしょうか?
もしやり直せるとしたら、これまで行なったとは違う風にやるでしょうか?
EJ:
ライフスタイルとか、私生活のことだよね? そう、これまでのところでは、明らかに犠牲にしたものはあるよ。子供がいないことなんかは、犠牲にしたことのひとつだね。
というか、誰だってやりたいことの全てが実現出来る訳ではないと思うけど、犠牲にする価値があるかどうかは、なんとも言えないよ。
僕について言うと、多分、音楽の練習や仕事に熱心過ぎたために、人生は自分の横を通り過ぎて行っちゃって、気がついた時は手遅れだったって感じだね。まとまった休みがあんまり取れないってのも犠牲のひとつだな。自分はラッキーだと思うよ、友達が沢山いて。理想的な状況なら、もっと友達と過ごす時間を作ったり、色んなことを時間をかけてやるだろうと思うけど。
なにしろ僕らはみんな、ここ(訳注:現世)に、ほんの短い間しかいないんだからね。だから、今自分がやってる事よりほんとはもっとずっと大事な色々なものを、忘れないようにすることが一番だと思うな。自分のやってることを完成させようとやっきになったり、アーティストとしての情熱をひたすら追求しようとしたり、そういう、自分の時間や人生そのものを飲み込んでしまうワナに嵌まって、立ち往生したりすることもある訳。なにしろ、そういうことには、しっかりした自制が必要だし、たっぷり時間もかかるしね。でも、バランスというものが、この世には確かに存在していると思うし、だから僕は、後半生では、そのバランスに則ってやって行くんだろうと思うんだ。僕にとっては、そっちの方が大事になって来てるから。
PB: (Val Serrie)
自分の傑出した能力は、持って生まれたそのままのものだと思いますか?
それとも、普通の人より深く、強く、長期にわたる訓練や技術習得の賜物だと思いますか?
EJ:
誰でもある程度の才能は持っていて、あとはそれをを発見して、磨きをかけて、開拓するかどうかだと思うんだ。持ってる才能が全く自然なままに見える人がいたり、ものすごく努力しなきゃいけない人がいたりするのは何故なんだろうね.....でも、いずれにしても、誰だって努力はしなきゃならないと僕は思ってるよ。
Alison Krauss(訳注:ナッシュヴィルのエンジェル・ヴォイスと言われるカントリー・シンガー)を観に行ったことがあってね。彼女は世界一好きな女性歌手の一人なんだけど。ほんっとに素晴らしい歌手なんだ! 歌が、彼女の口から、なんの苦もなくほとばしり出てくるんだよ。だから楽屋で話をした時に、「一体どうなってるの? あなたの歌唱は、ただただ見事なばかりだよ」って言ったんだ。そうしたら、彼女言ったよ。「こうするのには、そりゃあ一生懸命練習しなきゃいけないのヨ」って。いい例だよね。傍から見ると生まれたままの才能と思えるけど、本人はいたって厳しく訓練しているわけ。
あとね、訓練を単に一生懸命やるかどうかじゃなく、適切な方法でやるかどうかが問題だってことが、段々わかってきたんだ。ほとんどの時間一生懸命やっているとしても、その方法が賢明かつ適切でなければ、費やした時間ほどの実りはないんだ。「焦点の合った方法でやる」ことを覚えないと。
そうすれば、充分な収穫が期待出来るから。才能があっても、収穫のためには練習とか研鑚を積まなければいけない訳だけど、中には、どんな風にやれば無駄なく適切に出来るかが生まれつきわかってる人もいるし、そうじゃない人は、こけつまろびつ手探りで、その方法をみつけなきゃいけないってことだと思うんだ。僕は後者なの! ていうか、自分には才能があるとごく自然に思うけど、ちゃんと努力しないと、上手くいくか全然平凡になるかの敷居がぐんと高くなっちゃうんだ。
別に自分を酷評してるつもりはないんだよ、極々正直に言って、そうなの。スタジオで作業するでしょう、その時ちゃんと集中してなかったりすると、プレイバック聴いてびっくりだよ。「なんだこりゃ、信じられない! 『こういう風に』と意図してやってたハズなのに、全然そうなってない。まるで、ほんの先週ギター始めた奴が僕のコピー弾いてるみたいじゃないか!」って。ホント如実に出るよ! まあ、ある意味笑えるんだけど、でも、もしそこのところを自分できっちり受け入れて、ちゃんと問題に直面して状況を把握出来れば、改革の試みは、51%成功したことことになる。
つまり、そういうことも方程式の一環なんだよ。温室に住んでいたら、自分に正直にならないと、成長できないよ。だから、そういう時は憂鬱になったり自分をダメだと思ったりせず、アタマを冷やして現実を見るんだ。
PB:
多くの人が、プロデューサと仕事をする気はあるかと質問していますよ。一緒にやりたいと思う人がいますか?
例えば、Nile RogersやDaniel LanoisやJack Joseph Puigはいかがです? それと、Tom Lord-Algeのような人に最終ミックスをやってもらおうかと考えたことは?
EJ:
Jack Joseph Puig? 一緒にやる寸前まで行ったことがあるんだ。もし、今名前が挙がった内の誰かと知り合いで、向こうから電話して来るとか僕からコンタクトするとかして「一緒にやろうよ」ってことにでもなれば、僕は大歓迎だよ。
うん、絶対。プロデューサから「一緒にやらないか」って誘いを受けることって、あんまりないんだ。 Richardとは共同制作を沢山やっているから、彼は関係者で責任者でもある訳なんだけど、でも、うん、他の人と違ったこともやって、完全性のレベルを向上させたいと思うよ。
完全性がすごく高くなれば、出来るだけ有機的にやっても差し支えなくなると思うから。
微妙なバランスだと思うんだ。ジムで運動して、足が鍛えられてくると、必要なトレーニングをきっちりやったことによって、完全性のレベルは自動的・有機的に高くなるでしょ。「必要なトレーニング」の部分は自分の責任だけれど、完全性のレベルが高い人と一緒に仕事をするのも、ためになるよ。
僕が他の人と仕事をする時によくぶち当たる問題は(プロデューサとの間でも問題になることあるけど)、僕のやっているギタープレイやギタートーンの特質のイロハが、わかってないみたいだったりすることなんだ。
言い換えると、レコードプロデュースとか、よりよい製品をつくるとかいうことに関する限り、彼らは僕の周りをぐるぐる走り回って、最初の2テイクばかりをぱっと聴いて、真っ先に「ふむ、充分いけるじゃないか。このギターパートは立派なものだ」って言うんだ。
僕の方は、ヒクヒクしながら座ってるっていう具合。同じ物について、自分では「うーん、これは、調子が外れているのか、トーンが正しくないのか、パフォーマンスが自分の要求レベルに達してないのか .....」なんて考え込んでるところだったりするからね。
だから、僕のやっていることのレベルを向上させるために、合同でやれるような完全性を持ち込んでくれる人がいれば、特にいいと思うんだ。けど同時に、僕がギターで望んでいる完全性のボキャブラリーを、「きちがい沙汰だ」と思わずに理解してくれることも必要だな。
僕は自分と折り合いをつけるようになったし、自分のギタープレイに関して、高水準の完全性を持つことはもちろん良いことだし、必須だっていうことが今はわかっているから、そういう自分がとても快適なんだ。
今僕が言っていることを聞いて「そんなこと構うもんか! テープを巻いて投げればいいだけのことさ」って言う人もいるだろうと思うし、「テープ巻いて、ほい」程度の完全性でよければ、それも結構だよ。でも僕はそういう、平然として「俺は1テイクしか取らない。それ1本で決まりだ」で録って、安っぽい、いかにものエレクトリック・ギターの音にしてしまうようなことには興味ないから。
そんなの、僕には何もならない。クラシックのヴァイオリンとか.....そういうやつの.....音楽性のレべルでのアプローチがしたいんだ。
でも、そうは言いながら、最初の1、2テイクはそういう「一発」風に録りたいね。
最初の何回かのテイクで、プレイに没頭して出来る限りハードルを上げていきたいんだ。そうすれば2つの面でベストが実現出来る。有機性も獲得出来るし、高水準の完全性も。そうやっているミュージシャン一杯いるよ。
そういうレコードも一杯名前挙げられるけど、ま、それはともかく.....そういった順調な仕事を呼吸を合わせてやれるプロデューサか共同プロデューサとやれたらいいと思う。彼らの多くは、「よし、ギターはいい。どんどん行こう」とぱっと言うからね。
微妙なバランスなんだよ。バランスをとるポイントを探すようにしてるんだ。新譜でやろうとしてるのは正にそれ。ほんのもうちょっとだけ、自然さを得ようとしてる。そういう風にやろうと努めてるし、ほんとにそういう風になって来てるんだ。『Venus Isle』より、生命力や有機性がずっと沢山あるよ。
僕にはそれが必要だったし、求めてもいたんだ。
振り返ってみて、『Venus Isle』を聴いた時一番不満だったのは、生命力がいささか締めつけられてるところ。で、究極を目指すなら、維持したいものは一杯あるんだけど、そのひとつが、今言ってた生命力と、有機的エネルギーなんだ。敏腕で息も合うプロデューサと一緒に仕事すると、有機性をちゃんとつなぎとめつつ、完全性のレベルを上げるように後押ししてくれるから、その両面でベストなんだよね。
PB:
私は『Venus Isle』とても好きですよ。
EJ:
ヘンな話なんだよね。あのレコードは....昨日の夜Richardが言ってたんだけど、『Venus Isle』は、音楽的にはある意味で僕のベストなんだけど、こう、うっすらと.....エネルギーが相殺されちゃってるっていうんだ。で僕は、ものすごくそう思う。なにしろ僕はあれを3年もの間、死ぬまでぶっ叩くというか、いじくり回していた訳だから。
もし同じレコードを今作るとしたら、半年とか8ヶ月とかそのくらいで作って、そしたら、全体的にもうちょっと軽くてのびのびしたエネルギーを持ったものになるだろうと思うんだ。音符ひとつ変えないとしても、今の『Venus Isle』とはもっと違うオーラを持つだろうと。
同じレコードでも、質的にこう、もうちょっと生命力があるようにね。
『Venus Isle』で的を外したところを挙げるとすれば、曲や音楽じゃないと思うんだ。そういう生命力や生命エネルギーを守ることに充分注意を払ってなかったのが問題で、音楽を正しく的確にしようとするのにかまけすぎて、他の2つの問題(自然さと生命力)のことはころっと忘れちゃったところがダメだったね。いい勉強になったよ。
PB:
ツアー装備にはなにか変更がありましたか?
EJ:
いや、全く同じ。ここ数年使ってたのより、ちょっとワット高めのアンプを使うこともあるけどね。健康状態(訳注:耳のこと)もよくなったし、また危険をもて遊びたいからさ。(((((笑)))))だんだん上手く行ってきてるし、多分.....ねえ.....アンプ全部100Wで登場するかもよ!
PB:
まああ! 耳はお大事にね。
EJ:
うん、ほんとにね。気をつけないと、すぐに耳鳴りに逆戻りだから。えーと、変わったところと言えば、個人的には、50Wアンプより100Wの方を採るってとこだね。だってさ、正直言って、50Wアンプの音に満足したことって一度もない訳。50Wにはずーっと手こずってきたんだ。
過去5年に渡って50Wを使ってきたんだけど、その間いつも、自分の最も特徴的な音については少し妥協せざるを得なかったんだ。だから他の(50Wでない)アンプを使った方がいいと思って。でも装備の変更はそれだけ。
PB: (Stephen Soisson)
現在のディレイのセットアップに非常に興味あるんですが。特に、メインのリードには、もっぱら例の、アンプに入る前に入れてるエコープレックスを使ってるんでしょうか? それとも、スピーカキャビネットからマイクで拾った音にディレイをかける方法も採っていますか?
EJ:
うん、スピーカキャビネットからマイクで採った音にディレイかけてるよ。
PB: (Stephen Soisson)
「Elevator Sky Movie」での、ペダル・スティールタイプのベンディングのワザ、 Steve Winwoodスタイルのキーボードのようで、ぶっ飛びました。
コード・ボイシングやフレージングの点で、圧倒されます。この部分、Winwoodがインスピレーションになったりしましたか?
EJ:
うん、Steve Winwood大好きだから。Trafficのレコードも好きだったし、Blind Faithのレコードも大好き。ほんっとにすごい、すごいプレイヤーだもん。最高に素晴らしいハモンド弾きだよ! ああもう、ほんっとに弾けてるんだ! B-3を見事に弾きこなしてる。
PB: (Tom Cook)
僕は、Ozzy Osbournのギタリストで20年近く前に死んだRandy Rhoadsのファンです。Ericは、彼の音楽を聴いたことがありますか?また、どう思いましたか?
EJ:
えーと、ホント正直言って、ほとんどよく知らないんだ。子供の頃Black Sabbathのレコードは聴いてて、だからRandy Rhoadsとは知らずに聴きはした訳なんだけど。彼はとても良かったよ。メタル・ギターは彼が始めたようなもので、パイオニアだと思うし、それにいいプレイヤーだね。彼自身のスタイルについては、僕はよく知らなくて。
PB:
私はOsbourneのTVショウが好き。観ました?
EJ:
僕はむしろ60年代のMiller夫人の方がね。彼女には、Ozzyの『Ozzfest』みたく『Millerfest』てのがあって(にやにや笑い)。『Millerfest』に参加するには、ものすごいヴィブラートがないといけないんだヨ。
PB:
ライブビデオやライブDVDのリクエストが常にありますよ。皆ほしがってるの。そういえば、 The House of Bluesのサイトで流したビデオは、今あそこの視聴率第3位なんですよ。(訳注: 2002年6月現在)
EJ:
The House of Bluesのビデオが? 5位だったのは知ってるけど。自分じゃ1度もちゃんと観てないんだよね。ミックスとかは自分達でやったけど。そうね、ライブビデオは作りたい。
高くつくのが問題でね。今は時期的にちょっとマズいんだ。Alien Love Childのライブ・レコードを出したので、新譜を出さなきゃいけないし、だから新譜を出すまでは、ツアーはしないんだよ。
小さなクラブとかでちょこちょこやるだけでね。だから、新譜出してツアー始めてもっと金が入るようになれば、後はビデオを作るか作らないかだけの問題になるんだ。
仕事的には、すぐにだってやる用意はあるけど、問題はともかく金がかかるってことだから。ライブビデオは、1日2日で仕上げるくらいの仕事にはうってつけだよ。作りたいな。
PB:
皆ほしいですよ。それと、今度リリースされる蔵出しものも、わくわくして待っているところです!
EJ:
うん、あとミックスを3つ残してるだけなんだよ。収録は15曲くらいになると思う。なんか唐突で奇妙な、中間報告みたいなものだけど、でも面白いんだ、僕が聴いてみた時、いいところも悪いところも一杯あるんだけど、それ全部ひっくるめて、「お、なんかいかしてるじゃないか、これ」と思ったんだ。クールだと思うヨ。
PB:
じゃ、ほとんど完成してるんですね?
EJ:
うん、そうなんだ。実際にはあと2曲録音しないといけないし、3曲は仕上げてない状態だから、それもやってしまわないといけないんだけど。なんかヘンな感じだよ、だって15年前の曲を、リードを一箇所やり損ねてたんで、今回新たにリードを録音したり、新たにリードを入れたりしてさ。
もう1曲の方は、ドラム/パーカッションがなくて、だから自分で入れたんだ。でもそれ以外のところでは、ほぼ100%録った時のまんまだよ、Richardがリミックスはやったけどね。でもさ、うん、ホントすぐに仕上がると思うから、そしたらまとめに入って、マスタリングって運び。インターネットで販売する予定なんだ。売れるといいな。
PB:
リストメンバー全員が一人1枚は買うわ。
EJ:
そりゃうれしいな。
-------その2に続く--------