1998年6月 EJインタビュー

出典: Eric Johnson Mailing List, June/1998
copyright: Eric Johnson/Park Street, (c)2002-3
「日本語文責: 山巻 由美子」

このinterviewは、EJ-Lで不定期に行なわれるものです。ej-jpがPark Streetの許可を得て翻訳/配信します。従って配信/引用等は、固くお断り致します。なお、日本語文責は、山巻 由美子が負っています。

PS: Park Street(聞き手。本家リストオーナー)()内は、質問者名
Eric Johnson(ご本尊)

このインタビューは、ある日曜、地元オースティンで、コーヒー片手に湖を眺めながら行なわれた。かなり暑いと思ってはいたのだが、それもそのはず、後で42℃だったとわかった。(Park)

PS:
(Chris Florko) 「質問1。Alien Love Childは、どんな感じですか? メンバーは? CDやツアーはアリでしょうか?」

EJ:
今んとこは、何もしてないんだ。Bill MaddoxとChris Maresh(これがAlienのメンバーね)と1曲録って、それは新譜に入るよ。

PS:
「質問2。カバー曲だけのアルバムを作ろうと思ったことがありますか? 曲を書かずに済む分、楽だと思うのですが。ライヴでやっているSimon and GarfunkelのApril Come She WillやらHendrixの曲やら聴きたいです。」

EJ:
うん、考えたことはあるよ。

PS:


EJ:
カバーしている曲は、どれも原曲そのままの状態でとても素晴らしいから、僕としては、録音しない非公式な形で完コピを演るのが楽しいんだ。インスパイアされたものには、そういう敬意の払い方をしてる。Hendrixの曲を自分のスタイルでやり直してみたいなんて、思ったことがないヨ。

PS:
(Kevin Schutt) 「"Venus Reprise"のことですが、曲全体ではなく抜粋だけを録音したのは何故ですか?」

EJ:
スタジオでは、上手く唄えなかったと感じたので、インストの曲にしてしまった訳なんだ。

PS:
(Donald Linsenbach) 「質問その2。いつでも聴いてお気に入りな曲は? 自作曲や、自分でプレイする曲以外ですが。」

EJ:
一つだけ選ばなきゃいけないとしたら、Joni Mitchellの"For Free"かな。

PS:
(Mark Goodman) 「質問1。欧州や南アフリカ(私の国)など、海外ツアーはしますか? しないなら、理由は?」

EJ:
出来る時はするよ。チャンスがあれば、南アフリカをツアーしてみたいね。

PS:
(Mark Goodman) 「質問2。ギターワークショップはしますか?」

EJ:
滅多にしない。


PS:
(Byran Chestang) 「質問1。Marc Anthony Thompsonの、1984年にWarner Brothersレーベルから出した同名のアルバム(訳注:アルバムのタイトルもMarc Anthony Thompsonだという意味)にEricがギターを弾いているとあるのですが、事実でしょうか? このアルバムは今でも入手可能なんでしょうか?」

EJ:
僕が? ホントわからないや。スタジオワークをすごく沢山やってた時期があるから、その頃にやったのかも。

PS:
(Byran Chestang) 「質問2。前の質問とは関係ないんですが、Eric Johnson and The Avenueの頃の曲は出版されていますか?  "All I Need"とか"All Those Days"とか? それと、今でもRob Alexanderと連絡取り合ってますか?」

EJ:
そういう曲は全部出版されているヨ(訳注: 厳密には、これは出版ではなく版権が確立しているという意であると思われる)。それと、Robからは丁度こないだ手紙もらったんだ。

PS:
(Jeff Wallace) 「1954年製のストラト"Virginia"は、いつ、どこで手に入れたのですか?」

EJ:
AustinのJ.R.Reed Musicの商品保管所で、1977年にね。調整待ちで壁にかかってたんだ。で、所有者に電話して、売る気がないか聞いてみた。彼はないと言ったんだけど、いいGibsonとの交換だったらアリみたいでさ。数日後に、すごくいいSGを見つけたので、これなら交換してくれるかもと思って買ったんだ。してくれたヨ。

PS:
(KingsleyD) 「エレクトリックではなくアコースティック用の話だが、実は私はピックの形を加工し、同じ目的で厚さも調整している。色々なギターをコレクションするよりピックをコレクションする方がずっと安くつくし、時にはピックを変えるだけで劇的な違いが出ることもある。例えば昔の似非12弦風の音の出し方は: 普通(かなり薄め)のFender型のピックに、刻み目をつけて弦との接点が二重になるように加工すると、12弦のダブルアタックの特徴が出る(オクターブとはいかないが)。Ericは、このテの裏技を何かやっているだろうか?」

EJ:
全然。ピックを紙やすりで削る以外は、そのテのことは何もしてない。

PS:


EJ:
何人か挙げるとしたら、Peter Gabriel、Bryan Adams、B.B. King、Joni Mitchell、Paul Rodgers、Grady Tate、それにNancy Griffith。

PS:
(Chris Florko) 「質問1。Ericの練習スペースと聴覚について質問があります。あるインタビューで耳鳴りにやられているというのを読みましたが、今の状態はどうですか?」



PS:
(Chris Florko) 「質問2。上記と絡んで、練習スペースとサウンドについてです。彼はそのインタビューで、小さな部屋でMarshallのボリュームを10にしてプレイするという真似を長年やりすぎたと言っていますが、そういう目的の特別なスタジオを使ってたんでしょうか、それとも自宅に防音室があるのですか? Marshallをでかい音で使うとすれば、ご近所さんへの影響があるかと。」

EJ:
今ではもっとずっと小さい音でプレイしてるし、練習は自分のスタジオの広い部屋でしてるヨ。

PS:
(Chris Florko) 「質問3。今やっている事について質問です。 自分の聴覚を危険に晒さずに、望むトーンを得るために、どういう風にしているんでしょうか。」

EJ:
アンプの位置に気をつけてる。ボリュームは、以前の半分以下になってるよ。

PS:
トーンやフィードバックは、それで満足してるかい?

EJ:
うん。やっと以前みたいなサウンドが得られるようになってきてるんだ。低い音量でやるのはほんとに大変だったけど、かなり出来てきたよ。

PS:
(Byran Chestang) 「リストで未リリース曲の話をしているので.....1993年のBlues Festivalツアーで、EJは"World of Trouble"という曲を演りました。インストルメンタルのブルーズ曲で、非常に素晴らしかった!!!! あれはEJのオリジナルですか、あのツアー用に準備した、誰かのカヴァーでしょうか?」

EJ:
あれはオリジナル。スタジオでライヴで録ったので、次のレコードに入るよ。(訳注:この曲は結果的にLive & Beyondに収録されたが、この時点では、まだスタジオアルバム収録曲としてカウントされていた。)

PS:
(Arthur Hung) 「Parkへ。次にEricと話す機会があったら、どうか"Lone Star"(Stuart Hammのアルバム"The Urge"収録)をもっとギター優先に録音し直すことを真剣に考えるよう頼んで下さい。」



PS:
(Mark Anderson) 「質問1。創作や録音において、よいトーンを得るためのEJのアイデアについては色々と語られていますが、hi-fiについての意見はどうでしょう。自分の録音を聴く時は、どんなhi-fi機材がいいですか? ギターの機材並みにステレオ機材にもこだわっていますか?」

EJ:
ぼくのステレオは、もう30年くらい使ってるやつだよ。Mac(訳注:McIntosh Laboratory。米国のオーディオメーカー)の真空管機材をもうずっと使ってるんだ。ソリッドステートの機材もあって、それも気に入ってる。ステレオ機材にはそんなにこだわってないヨ。

PS:
(Mark Anderson) 「質問2。しょぼい機材で自分の録音を聴く時はどう感じますか?」

EJ:
時にはそっちの方がよかったりして(笑)。

PS:
(Mark Anderson) 「質問3。機材のブランド(スピーカやアンプ等)やスタイル(平面スピーカ対コーンスピーカ、真空管アンプ対ソリッドステートアンプ等)で、非公式におススメはありますか?」



PS:
(Mark Anderson) 「質問4。スタジオでは、どんなプレイバックシステムを使っていますか?」

EJ:
BGWパワーアンプと、Yamaha NS19スピーカ。

PS:
(Mark Anderson) 「質問5。クラシックのCDでおススメはありますか? 特にEJ自身のリードプレイを思い出させるようなヴァイオリンものは?」

EJ:
ないっ。(訳注: EJは自身のリードプレイを思い出すような聴き方はしていないので、否定断言となった)

PS:
(Mark Anderson) 「質問6。ヴィンテージギアのお天気屋ぶりにつき合わされないように、全部放り出して100%現行版/デジタルに替えよう(Eddie Van Halenが以前やったみたいに)という誘惑にかられたことがありますか?」

EJ:
もちろん。ゆくゆくは、ギアはみんなコンピュータソニックなモデルになって、僕はPAにつなげたコンピュータにプラグインするだけ、になると思うヨ。

PS:
(Mark Anderson) 「質問7。Rushに熱中したことがあるか知りたいです。EricがLifesonのプレイやRushの音楽一般についてコメントしたと聞いたことがないもので。」



PS:
(Mark Anderson) 「質問8。Strunz & Farahのような、フラメンコ/ジャズスタイルのギターに挑戦したことがありますか?」

EJ:
ないです。

PS:
(Mark Anderson) 「質問9。自分が読んだり長年使ったりしているギターや音楽の教則本で、他のギタリストへのおススメはありますか?」

EJ:
Ted Greeneの"Chord Chemistry"。(訳注:現在絶版です)

PS:
Ted Greeneが出てきたところで、その内、君のツアーの前座に彼を起用したら?

EJ:
やってくれるなら、そりゃもう、ぜひともそうしたいよ。

PS:
(Mark Anderson) 「質問10。Ericのギタープレイは、一足飛びに向上しましたか?それともゆっくりと着実な向上ぶりだったでしょうか。」

EJ:
ゆっくりと着実なプロセスだったヨ。やればやるほど上達していったんだ。

PS:
(Mark Anderson) 「質問11。演奏しながら(または音楽を聴いていて)、その音楽を視覚的に心に描いたりしますか?自分の音楽は形か、色か、線か、他の何かとして見えますか?」

EJ:
間接的にね。(訳注:心に視覚的に描くとすれば、それは音楽そのものを、ということではない、という意味)

PS:
(Mark Anderson) 「質問12。HendrixのトリビュートCDのどれにも参加してないのは何故でしょう?EJ以上にうってつけの人物はいないと思います。参加しないのは罪だと思うんですが。」



PS:
(Mark Anderson) 「質問13。今までに録音した曲の内、違う角度で再録音して新譜に入れようかなと思うようなものはありますか?」

EJ:
ないです。

PS:
(Yumiko Yamaki) 「".....Mountain"(EJの歌唱から正確な題名をつかむのは、外国人の私には無理でして)について、一つうかがいたいことがあります。
リストでは5月にRobin Detlefsenから以下のように聞いている訳ですが:
『今日Ericと話したところ、それはVenus Repriseだと言っていた。スタジオで、編集時にどんどん切って行ったら、結果的に最初の形よりとても短くなったと。また、ヴォーカルトラックがどうしても気に入らなかったので、ヴォーカルはばっさり捨てたそうだ。』
で、これは、もう".....Mountain"の録音は諦めたということなんでしょうか? それとも、いつかまた録音してみようと思ってますか?」

EJ:
録音では、どうしても、アタマの中にあったように美しく出来なかったんだよね。望んだようなものがいつか録音出来るのか、わからない。あの時点では、ジャムとしてアルバムに収録するのが精一杯だったんだ。

PS:
(bedwellm) 「質問です。音楽をやって来てピークを迎える瞬間が何回かあったと思いますが、どんな風でしたか?」

EJ:
Ah Via Musicomが出た直後からの時期が楽しかったな。2500席クラスの公会堂や劇場でプレイ出来たし、みんなすごく盛り上がってくれて。クラブと違って劇場には、ある種の雄弁さがあるんだ。いい照明とか、いいPAとか、すごく盛り上がってるお客さんとか。

PS:
(Mitch Keen) 「質問1。新譜のトーンでは、新しい小道具や突飛な楽器を試したりしてますか?」

EJ:
全然してない。

PS:
(Mitch Keen) 「質問2。新譜ではVirginiaは使用してますか? してないとすれば、代わりに何を使っていますか?」

EJ:
今んとこは使ってないんだ。もう退役させてずいぶん経ってるんだよ。5年前に転倒させちゃってね。以来、元通りにしようと頑張ってるんだけど。録音に使うことになるとは思うんだ。なにしろストラトキャスターは、今じゃ3本しか持ってないから。5千万本も持ってる訳じゃないからサ。以前はかなり持ってたけど、ここ2~3年で沢山お払い箱にしたんだ。

PS:
それじゃ今までのところ、録音に使用していたギターは.....335か.....レスポール?

EJ:
今んとこは335だけ。レスポールも他の2本のストラトも間違いなく使うことになるヨ。

PS:
(James Wall) 「"Manhattan"が好きなんですが、この曲のインスピレーションになったのは何でしょうか?」

EJ:
Wes Montgomeryの、Down Here on the Groundからのリフをモチーフに使ったんだ。Wesへの一種のオマージュを書こうと思って。正統派のジャズ曲にしようとか、Wes Montgomeryの曲っぽくしようということじゃなく、Wesの風合いを出そうという意図でね。

PS:
(Clint Haygood) 「Austin/Houston地区では、どこでプレイするのが一番楽しいですか? その理由は?」
Hole in the Wall.....だろ?

EJ:
そうね、あそこはすごくいいセブン-イレブンがあって.....。まじめな話、Music Hallは素晴らしいし、La Zona Rosaは楽しいな。Backyardも、昔プレイするのが好きだったんだ。テキサスでプレイしてて、いいなって思うのは、人だね。僕にはとても大切なんだ。一緒に育ったり長いこと僕の成長を見守って来てくれた人たちのためにプレイするのは、僕にとって本当に名誉なことだよ。それが、ここ(テキサス)でのプレイを特別な質のものにしてる。.....そういう人たちのためにもっとプレイしたいと思ってるんだ.....

PS:
君がまたParamountかSymphony Squareでプレイするのを見たいねえ。

PS:
(Charlie Hollis) 「質問1。立ち入った質問ではないと思いますが、Bristol Shoreには、自分の話がどれくらい入ってるんでしょうか? Ericの歌詞が描写する女性には、ずっと謎めいたイメージがあるんです。「彼女は海で働いてる。土地使用の正当性のために」とは、雇い主というか誰のために働いていて、何をしていたんだろう、と考えます。歌で物語を語るEricの才能のおかげで、こうして何年も聴いていても、いまだに「彼女」はどんな人なんだろう、実在するEJの友人や知人なのかな、等と考えてしまう訳なんです。 Bristol Shoreは、多分テキサスの海岸地帯のどこかなんだろうと想像してます。あくまでも想像ですが。」

EJ:
あれは、Galvestonに住んでいた友人のために書いた曲なんだ。当時彼女はヘリコプターで、湾岸の油田採掘場に行く所でさ。目的地は多分Galvestonの近くだったんだろうと思うけど。歌の方の名前(Bristol Shore)は、地球儀を見て、唄うのによさそうな地名を選んだんだヨ。(訳注:Galvestonは、Houstonから南東に40マイル程の、海岸沿いの島。)

PS:
(Charlie Hollis) 「質問2。軽めの音楽で、子供の頃から親しんでいたものがありますか? ボストンでEJのショウを見た時、彼は今晩はDiana Rossの曲は歌わないヨ、Burl Ivesのカヴァーも演らないからね、なんて言ってたんです! それが可笑しかったんですが、EJが普段気軽に聴いているのはどんな音楽なのかな、と思いまして。(これも、立ち入った質問ではないだろうと思います。)ちなみに、EJはそう言った後で"Red House"を演って、皆大喜びでした。印象的な晩でしたね。」

EJ:
親父の趣味の幅がすごく広かったせいで、子供の頃からスウィングやらブロードウェイ・ミュージカルやら一杯聴いてたよ。レコードが一杯あったんだ。Jim NaborsにLawrence WelkにTommy Dorseyでしょ、Frank SinatraにDean Martinでしょ.....。

PS:
よし、最後に、無人島へ持っていく10枚のレコードは?

EJ:
そりゃヒジョーに難しいな。よし、いくよ。
Jeff Beckの「Truth」
Wes Montgomeryの「Down Here on the Ground」
「Are You Experienced」
「Axis Bold As Love」
「Electric Ladyland」、この3つはJimi Hendrixね。
Creamの「Wheels of Fire」
「Song to a Seagull」
「Ladies of the Canyon」、この2つはJoni Mitchell。
Glenn Gould演奏のハイドンからどれか1枚。
Nat King Coleの「Love is the Thing」

��おしまい=